少食で長寿・・・
小太りが長生き・・・
どちらも言われますよね。
ルネサンス時代の貴族ルイジ・コルナロのように、極少食によって104歳という長生きの人もいます。
日本でも、腹八分目を勧めた江戸時代の学者である貝原益軒は84歳の長生きでした。当時の平均寿命は35歳前後だったということですから、これはかなりの長寿です。
一方で、厚労省の研究班が行なった統計などでは、小太りのほうが長生きという結果も出ているようです。
いったいどっちなの?
サルが少食で長寿になった話
少食にすれば長生きできる説の根拠として一時期話題になったのが、米ウィスコンシン大学が行なったアカゲザルに関する研究です。
この研究で、摂取カロリーを制限したアカゲザルのグループと、逆に飽食にさせたグループとを30年に渡って追跡調査したそうです。
この期間、飽食のサルにとっては幸せの絶頂という感じだったのでしょうね。
ところが、数十年たってみると2つのグループに外見上、そして健康上の大きな違いが生じていました。
カロリー制限した猿らが外見上かなり若々しかったのに対して、飽食グループはひどく老けており、ガンや糖尿病、脳萎縮や心臓病が多く認められたということです。
生存率で比較すると、カロリー制限のグループは飽食グループの約1.6倍も高いという結果になりました。
しかし、後にはこの結果を否定する研究報告も出されており、混乱が起きているわけです。
ちなみにこの記事を執筆している時点で、ウィキペディアでは以下のようにまとめられています。
アカゲザルを用いたカロリー制限実験では、加齢関連疾患(がん・心血管疾患・糖代謝異常)による死亡のみを取り出した場合に寿命延長効果が認められるものの、全ての死亡原因でみると対象群との違いは見られなくなる。wikipedia「カロリー制限」
これによると、カロリー制限は長寿には直接つながらないけども、成人病の予防としては効果ありということでしょうか。
興味深いことに、前述の統計で寿命の長い順は、小太り>普通体重>肥満>痩せ型となりますが、東北大学の調査では医療費の高い順で並べると、肥満>小太り>普通体重>痩せ型となるようです。
つまり、小太りの人は長生きだとしても、病院のお世話になることが多いということになります。
この点は、アカゲザルの研究結果とも共通しているようですね。
少食か小太りかという比較がおかしい?
そもそも、食事の量と体型を比較することに無理があります。
「痩せの大食い」という言葉があるように、痩せていても大食家はいるわけです。
また、小太りになって長生きしたいからと、油ギトギト料理ばかりを食べても寿命が延びるとは思えません。
逆に、少食で長寿を目指すということで、栄養価の低いインスタントラーメンだけの少食生活をしても長生きできないでしょう。
もう一つ考えなくてはならないことは、食べ物の消化吸収能力は個人差が大きいということです。
体質的に消化吸収の弱い人が極端な少食にするなら、やはり栄養不足になって健康を害します。
そのような人が、若いうちに消化吸収を強化するために少食にするのはアリだと思います。
しかし、もともと消化吸収の悪い人が歳をとってから少食にすると、栄養不足による健康ダメージのほうが大きくなるかもしれません。
ところが、もともと胃腸が丈夫で消化吸収能力が高い人は、栄養価の高い食事であれば、少食でも十分健康を保てるわけです。
ですから、少食で長寿になれるかどうかは、その人の年齢や体質、食事の質で大きく変わってくるはずです。
また「心」の状態も大事な要素だと思います。
小太りでも、ストレスを食べることで発散するような生活を続けているなら、長生きしそうにありません。
一方で、少食の人が毎日生きがいを持って、笑顔を絶やさずに暮らしているなら、それは長寿につながりそうです。
要するに、長生きするかどうかは単純に食事の量では決められないというではないでしょうか。
現在の自分が少食にすることで健康になっているという実感があり、精神面・感情面でも充実した生活を送れているなら、それを続ければいいと思います。
逆に、無理に少食にすることで強いストレスを感じ、幸福感も何もないという生活だったらやめたほうがいいと思います。