慢性膵炎の専門医はなかなか見つからない
慢性膵炎というのは本当に難しい病気です。
中でも大きな問題は、患者数が少しずつ増加傾向にあるのと比較して、専門医が少ないということです。
専門医の少ない一つの要因として、これまでに膵臓の病気を専門に教えられる指導者や教授が少なかったということがあります。
そのように膵臓病の分野では、医師が教育を受ける機会が限られていたので、専門家が育ちにくかったのです。
その上、膵臓は胃や大腸などと違って、内視鏡で直接見れませんし、組織を採ることもできませんから、診断には一層高度な知識や技術が必要となります。
こうした理由から診断が出るまでに時間がかかったり、他の病気と間違って診断されることがよくあるようです。
特に早期の慢性膵炎では、血液検査でもエコー検査でも異常がみられないということも珍しくありませんから、専門医でなければなかなか診断できません。
ですから、ネット上の慢性膵炎患者さんの体験談でも、幾つもの病院を受診し、たくさんの検査を受けて、やっと診断がついたという例が少なくありません。
こうした事情を知らずに近所の病院を受診すると、単なる胃炎や神経症として扱われてしまうことも多いようです。
大抵の人は、医師から「膵炎ではない」と言われると安心して、そのまま放置してしまいます。
その結果、病気が進行していき、重症化して初めて診断がつくというケースがあります。これは膵臓ガンでも同じような傾向にあるようです。
病気が悪化しないと治療してもらえないのですから、これでは何のために病院に行くのか分からないですよね。
さらに慢性膵炎の診断が出ても、そこから患者さんに適切な治療や生活指導を行える医師もあまり多くはないという現状があるようです。
ですから、慢性膵炎の疑いをもった時には、医師の言葉を丸ごと鵜呑みにするのではなく、自分でもしっかりと知識を身につけて、膵臓に詳しい専門医を見つけるということが大切です。
慢性膵炎の専門医を探す
膵臓の病気に関しては、それ自体が患者数の少ないマイナーな病気なので、いい病院についての地域の口コミ情報も限られています。
基本的にはインターネットの活用が中心となります。
胆嚢・胆管、膵臓、肝臓を扱うのは消化器内科ですから、まずは近隣の消化器内科のホームページを探してみましょう。
膵臓病の専門であることを明示していたり、膵炎や膵臓に関してかなり詳しい記述があるなら期待できます。
検査設備として内視鏡や超音波診断装置以外にもCTやMRCPなどが備わっているなら、詳しい検査も受けられます。
個人病院や小規模の病院でなかなか目ぼしいところが見つからなければ、慢性膵炎治療の実績のある大病院を探します。
その際にひとつの参考となるのは、日本肝胆膵外科学会の高度技能専門医として認定を受けた医師がいるかどうかという点です。認定者の名簿が同学会のホームページで公開されています。
外科の認定医なので、手術が必要となるような重度の症例が専門だとは思いますが、検査体制としては十分に整っていると考えられますし、同じ病院に膵臓に詳しい内科医がいる可能性もあります。
ただし、紹介状なしで直接大病院に行く場合は、初診の診察料とは別に5000円以上の追加負担がかかります。
また病院の口コミ検索サイトの中には、地域の病院ごとに慢性膵炎の治療実績データを掲載しているところもありますから、それらも参考になります。
さらに地域の口コミでは情報が少なくても、ネットの掲示板やQ&Aサイトでは参加者が多いので病院情報を得られることがあります。
なかなか専門医が見つからない時は
慢性膵炎の専門医は簡単には見つからないことが多いですから、とりあえず自分でできることをしっかりとやっておくことが大切です。
その一つは、この病気について正確な知識を得るということです。
患者側がある程度の知識を持っているなら、膵臓にあまり詳しくない近所の病院でも上手に活用することができます。
例えば、一般的な血液検査の項目に入っているアミラーゼだけでなく、オプションでリパーゼやトリプシンなどの項目も調べてもらえるよう患者側から願い出るということも可能だと思います。
また症状の伝え方によっては、希望する消化酵素剤を処方してもらえるかもしれません。
もちろん患者側から要望を伝えるときは、お医者さんのプライドを損なわないよう上手に伝えましょう。
それと、慢性膵炎の治療では、薬物療法だけでなく生活療法も大きな柱となります。
生活療法については、診断が出ていなくとも自分で行なえることですから、症状を自覚しているなら早めに取り組んでみるのは良いことだと思います。
膵臓に優しい生活を送ることは、副作用も健康面の害もありませんし、むしろ健康を増進させますから、無駄にはならないはずです。