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「自分はガンかもしれない」

こんな疑念がまとわりついた時の不安感、恐怖感というのは本当に言葉にできない苦しみです。

おっちゃん自身も未病期間が長いだけに、何度も経験があります。

最初は何かの体の異変を感じて、少し不安になる程度かもしれません。

しかし、その不安を自分で強化するかのようにネットで調べ始めたり、他の症状が気になり始めたりして、どんどん思い込みを強くしていきます。

やがて「やっぱりガンなのかも。そうだったらどうしよう。」と、答えの出ないことを頭の中でグルグルと考え続けるようになってしまいます。

仕事をしていても、家族や親しい人たちと一緒にいても、自分の症状のことばかりが気になって、自分だけ違う世界にいるような感覚に陥ってしまいます。

夜も頭がさえて眠れなくなり、過去のことを後悔し、将来を悲嘆することの繰り返しで朝を迎えるかもしれません、

こうなってくると、生活の喜びも楽しみも全く感じられなくなってしまいます。

本当につらいですよね。

このように病気そのものよりも、「病気かもしれない」という不安感にとりつかれ、日常生活にも支障が出るような状態は、心気症と呼ばれています。

このような症状に陥ってしまう人は決して少なくありません。

最近では自分の症状をネットで検索して不安感を強める人も多いことから、「グーグル病」と呼ばれることもあります。

不安から逃れようとして、ますます不安にとらわれるという悪循環に陥った状態です。まるで蟻地獄のようですね。

もちろんガンの恐怖だけではなく、他の難病や重病についての恐怖も同じです。

「糖尿病になったのでは?」「心筋梗塞を起こすのでは?」などと想像して、その恐れから抜け出せなくなってしまうのです。

また、病院を受診しても、検査日やその検査結果を待つ期間中は、何も手がつかないほど不安感におそわれるかもしれません。

たとえ検査で異常が見つからなくとも、「いや、医師が見逃しているかもしれない」と納得できずに、次々と病院を変えて病気を見つけてくれる医師を探す、いわゆるドクターショッピングに走ります。

おっちゃんも、まさにそんな時期を過ごしました。

しかし、ある時点で「これではただの恐怖感の奴隷になっているに過ぎない」ということに気づき、何とか抜け出さなければと、もがき始めたのです。

そんな時に出会った言葉が「あるがまま為すべきを為す」でした。

感情はコントロールできない

「あるがまま為すべきを為す」は、神経症の治療法である森田療法で頻繁に登場する言葉です。

森田療法は、現在ではうつ病を含めて様々な精神障害や悩みを解決するための療法として、世界中で注目されています。

森田療法は日本で生まれた伝統ある治療法であり、明治・大正時代頃に森田正馬さんという精神医学者によって生み出されました。

森田療法のアプローチは、精神科や心療内科で一般的に行われるものとは大きく異なります。その特徴は、症状を患者自身の成長によって乗り越えることに重点が置かれていることです。

西洋医学の精神的治療の多くは、カウンセリングと薬物療法が中心となります。一方で、森田療法では日常生活の中での実践や日記をつけることが治療の中心となります。

この点では、森田療法は現在の認知行動療法と呼ばれるものに近いところがあります。

一般的な西洋的治療と森田療法のアプローチが全く異なるのは、その根本にある人間の感情についてのとらえ方が正反対だからです。

西洋医学では、感情は自分でコントロールできるものと考えます。ですから、より上位の機能である思考を働かせることで、不安は消すことができるはずだというところからスタートしています。

ところが森田療法では、感情は自分の意志ではコントロールできないものと考えます。不安感が強くなっても、それをありのままに受けとめて、その消失を待つしかないのです。

この自分に生じる感情をありのままに受け止めることが「あるがまま」という言葉で表されています。

捕らわれからの解放

しかし、自分に生じた不安をありのままに認めるということは、なかなか難しいことです。

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「この不安をそのまま受け止めなければ」といくら考えたところで、むしろ不安に意識を集中するので苦しくなります。

このように感情を自分の意思でどうにかしようとする努力を、森田療法では「はからい」と呼び、それがますます感情への捕らわれを強化すると教えています。

そこで大切になってくるのが、「為すべきを為す」という言葉です。

この意味は、「目的を重視してそのための行動に集中する」ようにということです。

そのように行動重視、目的重視で物事にあたる時に、それに伴って感情も速やかに変化し、もはや捕らわれることはなくなるというわけです。

分かりやすくするために、バンジージャンプで恐怖心からなかなか飛び降りれない人の状況に例えてみましょう。

この人は恐怖心を無くしてから飛び込もうと、一生懸命に努力しています。

恐怖に打ち勝とうと、あれこれ思考を巡らします。しかし、そうすることでますます恐怖が強くなり、足が動かなくなっていきます。

このように、恐怖心を打ち消そうとする努力が「はからい」ということになり、多くの人にとっては「はからい」が感情への捕らわれにつながります。

このような場面で森田療法的に対処するということは、恐怖心という感情はそのままにしておき、「恐がりながら」飛び込むことです。

「恐~い」と思いながら、飛び込むのです。

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そんなことが本当に可能だろうか、と思いますか?

感情の性質を正しく理解し、森田療法の実践を繰り返していくなら、この「感情をそのままにして行動する」という感覚を肌で感じられるようになります。

こうして飛び込むことができたなら、もはや恐怖という感情は消失してしまっていることでしょう。

感情をそのままにして行動したことで、結果的に感情は消失してしまったのです。こうして感情の捕らわれから解放されます。

このように感情を操作しようとするのでなく、目的重視の行動によってあるがまま受け止めようというのが、森田療法の目指すところなのです。

恐がりながらやるべきことをやる

病気の恐れに対処するために森田療法を当てはめるとすれば、病気を恐れながらもやるべきことをやるということになります。

「本当にガンだったらどうしよう」という不安を打ち消す必要はありません。

その不安をそのままに、病院の検査を受けたり、医療に関する情報を集めたり、健康に役立つ習慣を実践したり、仕事や家事などやるべきことにしっかりと集中して生活していくのです。

本を読むときも、不安感を無くすために読むのではありません。健康を取り戻すという目的に役立つ本を選んで読むことです。

もちろん最初は何度も繰り返し不安がよぎることでしょう。

そこでやるべきことをやめるのではなく、ビクビクしながら、フラフラしながら、ヨロヨロしながら、エンエン泣きながら、ダラダラ鼻水を流しながら、目的に向かって行動し続けるのです。

そうして目の前のやるべきことにひたすら集中して毎日を過ごしていくなら、いつしか不快な感情は和らいでいきます。

なぜなら、感情というのは不要に刺激しなければ、必ずいつの時点かで消失していく性質を持っているからです。

嫌な感情を消そうとか、それを克服しようとして、感情に注意を向けることでその奴隷となってしまいます。

感情に逆らわずに仲良く付き合っていくことが、健全な精神状態を取り戻すカギなのです。

そのために感情ではなく「為すべきを為す」ことにフォーカスしていくのです。

おっちゃんも「為すべきを為す」と意識を持つようになってから、恐怖心の奴隷から徐々に解放されました。

病気への恐怖心は本来は敵ではありません。健康を取り戻す行動に向かわせるため私たちを駆り立ててくれる愛のムチです。

恐怖を感じながら健康道を歩んでいきましょう。

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